政略結婚 ~全ては彼の策略~
どうして悟はこんな場所に痕なんて付けたんだろう………。
優香は答えの見つからない疑問を考えながら悶々としていた。
お風呂に入って鏡で見た時には多分見える範囲では痕は無かったと思うが……
そう思いながら午後の仕事が始まる前にトイレへ向かう。
3人の女性が鏡で化粧を直しながら話していた。
「でさー、神崎さんが山本くんに式場の事聞いててもうショックー。」
悟の名前と"式場"という単語にドキリとする。
優香が現れたため3人ともお疲れ様ですと挨拶を交わすと話を続けていった。
「それでそれで?神崎さんも結婚するの?」
「そうみたい…。奇跡の独身だった神崎さんが既婚者になるとかテンション下がる……。」
「えー、相手は?」
「そこまでは分からなかったけど、神崎さんが結婚する相手だからそれなりにハイスペックなんだろうな〜」
山本とは確か悟が秘書課に異動する前にいた課の後輩だ。
もうすぐ結婚が決まっており、優香の父親も式の挨拶を頼まれたと言っていた。
——ハイスペックじゃなくてごめんなさい。
もし、社長の娘が優香じゃなく他の誰かだったとしても悟は迷わず結婚していたはずだ。
他の利用価値のある女性が現れていたとしても同じく、悟は結婚していたのかもしれない。
優香は申し訳なさと、やるせなさを感じながら用を終えるとその場をあとにした。