政略結婚 ~全ては彼の策略~

悟がお酒を飲んでいる姿を見るのは初めてだ。

缶ビールでさえも彼が持っているとCMのようにお洒落に見える。


運転のために飲めなかったのを申し訳なく思いながら声をかけた。

「悟さん、ドライヤーありがとうございました。」

「…あぁ。」


悟は優香をじっと観察するように見つめる。

何だろうかと首を傾げていると、缶ビールを持ったまま悟がキッチンから優香へ向かって歩いてくる。

「…髪、まっすぐなんだな。」

「はい。いつもは寝癖を直すついでに巻いてて…」


そのまま悟が優香の髪を指で救いとりなが遊び始めた。

優香はいつもセミロングの髪の毛先を緩く巻いている。


「……ふーん。」


悟は気のない返事をしながらも優香の髪から指を離そうとはしない。

そろそろ優香がいつものようにキャパオーバーになりそうになった頃、ようやく解放される。


悟は缶ビールをローテーブルへ置くと髪を乾かしに脱衣場へ向かったようだった。


優香はほっと胸をなで下ろしたが、ふと我に返り、とんでもないことにやっと気がついた。


リビングの奥にもう一部屋あり、仕切りはあるが開けっ放しになっている。

その部屋には大きめのベッドが1つと、仕事用であろう机と椅子、本棚とクローゼット。

勿論、他には部屋はなく客室などというスペースはなさそうだった。

リビングにはソファがあるが、2人がけの幅しかないソファは座り心地は良くゆったりと座れるものの、寝るには狭い。

——あれ?
そういえば、今日泊まるんだよね……


私、どこで寝るんだろう………。


悟さんはベッドだよね?

私はソファで寝ればいいから大丈夫!

もしかしたら客用布団があるのかもしれないし。


1人でパニックになっていたところで、あっという間に髪を乾かした悟が戻ってきた。




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