政略結婚 ~全ては彼の策略~
父親から悟の事を紹介してもらい挨拶をすると、硬そうな雰囲気とは反して優しい声が印象的だった。
「よく娘さんの話を伺ってはいましたが、松橋副社長が自慢したくなる気持ちが分かりましたよ。」
悟が父親と談笑するのを横で聞いていると、悟が優香を向いて話を振ってきた。
「優香さん、とお呼びしても宜しいですか?」
まさか下の名前を呼ばれるとは思っておらずドキリとしたが、どうにか平常心で"構いません"と答える。
父親は自分の直属の部下で、とても優秀な人材であると周囲に自慢げに話をしていた。
ただでさえこんなに素敵な人なのに、仕事も出来るなんて凄いな…
優香はそんなことを思いながら、悟の後ろ姿をぽーっと眺めていた。
それ以来、毎年ホームパーティには悟も招待されるようになった。
年に1度会える時を優香はただただ楽しみにしていた。
大学の4年間、周りは恋人をつくって青春を謳歌している中、優香は友達たちのような恋人を羨ましく憧れを持つことはあってもどうしても悟の事が頭をよぎり、恋人という存在を作ることが出来ないまま今に至るのだった。