政略結婚 ~全ては彼の策略~
それを見て悟はぽかんとした後、これまでやり過ぎていたことを反省する。
いつも優香は勿論だが、他の誰にも見られる事の無い場所にキスマークを残しているつもりだったが、思っていたよりぎりぎりのラインだったようだ。
今までの経験上、女性にキスマークを付けようとさえ思った事がなかったため自分自身の独占欲に大人気なさを感じてしまう。
優香がポニーテールにすると、白く細い項の根元に明らかな所有の印が見えていたのだ。
——昨日は大浴場に入っているから、優香の背中を見た客は気まずかったかもしれないな…
温泉に行くことは分かっていたが、数日前に無意識につけてしまった印は昨日の夜に見た時も消えずに残っていた。
優香に悪い事をしたかもしれない。
悟はそっと優香を後ろからそっと抱きしめると、キョトンとした様子で見上げられた。
「……悟さん?もうすぐ準備終わるのでもう少し待って欲しいです。それか先に行ってもらっても構わないので、…」
髪を束ねながら見当違いな事を言っている優香の腕を優しく掴んで下ろす。
「……どうしたんですか?」
「今日は髪はこのまま下ろしておいて欲しいな。」
「……?…そうですか?悟さんがそう言うなら。でも束ねないとボサボサしてるのが目立ちませんか?」
寝ていたせいで少し絡まっている髪をどうしようか悩んでいる優香に「個室で食べるから他の客にも見られるわけでもないし大丈夫だよ」と諭して朝食へと向かわせた。