政略結婚 ~全ては彼の策略~

朝食は個室を用意して貰っていたため、色んな意味で良かったと思いながら悟は優香と朝食を頂く。

食事が終わる頃に女将が挨拶に来た為、電話のお礼を伝えるとにこにことしている。

「いえ、お二人のお時間をお邪魔してしまい申し訳ございませんでした。ですが、神崎様がいらっしゃるということで料理長がいつものように張り切って用意しておりましまのでどうしても召し上がって頂きたかったのです。」

「いつもありがとうございます。今回もとても美味しかったです。とお伝えください。特に夕食の焼肴(やきざかな)が彼女の好きな(さわら)だったのでとても喜んでいました。な?優香。」

「はい。夕食も朝食もとても美味しかったです。折角用意して頂いていたのに遅くなりご心配おかけして申し訳ありませんでした。」

優香は少し戸惑いながらもきちんと受け答えしている。

隠すつもりはなかったが、実はこの旅館も神崎家が経営する中のひとつで、悟の気に入っている宿だった。

元々は経営が厳しくなっていたこの旅館を従業員ごと買収して再建し直したと聞いている。

この宿から見る景色や旅館の雰囲気がとても好みで、何より古くからの旅館であるためか、従業員皆が温かみがあり真心を感じるのだ。

女将も勿論悟が社長子息である事を知っている。
しかしそれ以上に悟はかなりのお得意客である事の方が強い。

女将もそれを承知のため毎年連休が近づくと一部屋取っておいてくれているのだ。

優香にはまだ実家の事を話していない。
悟と実家の会社とは直接関係ない為もう少ししてから話せば良いと思っていたが、そろそろ話しておいた方が良いのかもしれないなと少し戸惑っている優香を穏やかに見つめながら思うのだった。


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