政略結婚 ~全ては彼の策略~

優香が会社に就職し、悟を身近に感じる様になってからはますますその人気ぶりを知る事となった。

悟は会社内は勿論のこと、会社以外の取引先の女性社員にもかなり人気があった。
熱心な仕事ぶりは勿論のこと、普段は寡黙で浮いた噂1つ上がらない硬派なところも更に人気に拍車をかけていたことは言うまでもない。

男女問わず会社の人間から信頼も厚く、そこにいるだけで安心感をもたらす悟は究極の人たらしなのかもしれない。


優香は悟の事を、仕事とプライベートをきちんと分けて生活しているのだろうと思っていた。

あんなに素敵な人だ。
恋人が居ないはずがない。


優香は会社でも悟と接する機会は滅多になく、耳に入るのは噂ばかりの悟。

浮いた噂は聞かないが、それはきっと心に決めた恋人がいるからだと思っていた。



悟はこの話を聞いてどう思ったのだろう。

社長(父親)からの提案を断れなかったのかもしれない。


優香は一人娘だ。
前社長は祖父、現社長は父親。
その流れからすると、必然的に優香の夫となる人間が次期社長候補に近くなる。

あれだけ仕事熱心な悟の事だ。
もしかすると、それを狙って優香との結婚も受け入れているのかもしれない。


優香はそれでも構わないと思った。

利用されても構わない。

悟の妻として、彼の隣で一緒にいることが出来るなら、私の持っているものを全て彼に差し出せる。


優香との結婚で悟が社長になる日が来れば、離婚もしずらくなるだろう。

悟は誠実な人だ。
お飾りの妻でもそれなりに大切にはして貰えるという確信が優香にはあった。


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