恋の授業





「そうか・・・
 めずらしいな。」


そういいながら、先生は去っていった。



わたしはそのままアップをすませ、試合の時間をまった。




ピー






第4Q



「・・・っ、」



得点は42対60


このままでは、負け。


残り時間はあと3分。





延長に持っていくにしても、あと18点。

スリーポイントを入れるにしても、あと6回。

1分間に2回。



・・・ほぼ、不可能。

敵チームは、もはや勝ったつもりでいる。

応援席も8割が敵の応援だ。

アウェー戦。


絶望の中にいるわたしの視界に菅原先生がはいった。





「・・・、」




菅原先生の口が“頑張れ”と動いた。


わたしには、それで充分だった。





「・・・みんな。
 まだ、いける。
 まだ、勝てる。」



『・・・・』



チームメイトの顔は数秒前のわたしと同じ顔をしていた。




「たった6回スリーポイントだよ?
 残り時間は2分53、52。」



時間は、刻々と過ぎる。




「忘れないで、なんのためにここまで練習してきたことを。」



2分48秒




少しずつ、みんなの顔にヒカリがともる。




「自信をもて!!
 いくぞ!!!!!」



叫ぶ。


魂をこめて。


・・・返事はないが、みんなの顔に絶望もない。




自分を信じろ。


みんなを信じろ。


それよりも、ここまでのつらかった時間を信じて。





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