可愛いなんて大嫌い
(ヤ、ヤバイぞ! これは今まで生きてきた中で最大のピンチだ!! どうすればいいのだ!?)

「試着室はあそこだ。着替え終わったら教えてくれ」

「なっ、まだ着るなんて言ってないだろ! うわっ、ちょ、ちょっと」

 嫌がる葵を無理矢理試着室へ押し込んだ。

「……あの野郎っ!!」

 試着室で葵は一人怒りに満ち溢れていた。

 しかしここまできたら“着る”しか手段はなく、嫌々ながらもメイド服に袖を通す。

(くそっ! あの男絶対許さん!)

 ──5分後──

 葵は試着室のカーテンからヒョコッと顔を覗かせた。

「……おい、お望み通り着てやったぞ。もう脱いでいいか?」

「何言ってるんだ!? 早く俺にその姿を見せてくれ」

「くそっ、どこまでも調子にのりおって!」

 非常に恥ずかしいため、試着室から出るのを拒むが、恐る恐るカーテンを開けてみた。

 葵のメイド姿を見るなり、雨宮太郎の鼻からは大量の血が吹き出る。

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