可愛いなんて大嫌い
 変態のいるコスプレショップから100メートルくらい離れたところまで逃げて来ると、2人は止まった。

「お前なんかに助けられるとは一生の不覚だ!! くそっ、借りが出来てしまったではないか!」

「借りとかそんな事は……っ」

「バカ───ッ!!」

「ご、ごめんなさい」

(……俺、なんで怒られてるの?)

 言いたい事だけ言うと自己中な葵は大人しくなった。

 葵が黙ったということは、自分が話していい番なんだろうかと考えた矢神は

「ねえっ、その格好凄く可愛いね」

 と一言。

 その瞬間、葵の顔は赤くなる。

「いっ、いきなりなんだお前!? み、見るな! あっち行け! こんなの葵じゃない!」

「なんでー? 葵ちゃんもしかして照れてるの?」

 いつも葵に言われ放題だったので、たまには意地悪なことも言ってみる。

「なんだと!? 照れてなんかないっ! お前なんか大っ嫌いだ!!」

「素直じゃないなぁ。でもそーゆーところ可愛いね」

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