可愛いなんて大嫌い
 しばらく追いかけたが、現役陸上部相手に追いつくはずもなく、今に至る。

「……くそっ、なんとしても写真を取り返さなくては!」

 日頃の運動不足が仇となり、呼吸をするので精一杯だ。

 玄関へ行ってみると、

「見つけたっ!! 返せ!」

 簡単に矢神を見つけることが出来た。

「お前、葵の弱味を握ってそんなに楽しいのか!?」

「うん、とっても」

 この瞬間、葵の怒りメーター第2機はあっけなく破壊された。

「お前という奴はどこまでも葵をバカにしおって……!!」

「だってこの葵ちゃん可愛いんだもん」

「……お前頭大丈夫か? この前から絶対おかしいぞ!」

 葵は手で矢神のおでこを触った。

「ねぇ、何やってるの?」

(何これ、可愛い)

「熱があるか確認しているのだ!」

「ないよそんなの」

「嘘だっ!! お前は何かのウイルスに感染してるのだ!」

「何それー? 感染なんかしてないよ。さっきからどうしたの?」

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