可愛いなんて大嫌い
 茶碗にヒビが入るようにメキメキと脳が刺激されていく。

 普段より更につり上がった目が怖い。

「……好きな奴にやるためだとっ!? それは男かっ!? 野郎なのかっ!?」

 さっきまで黙っていた葵だが、耐えきれずに大声を張り上げてしまった。

 梨加の肩をがっちりと掴み、前後にブンブン揺らす。

 階段を降りた廊下で言っているので、声がうるさいほどよく響く。

「そうよ。女にあげたってしょうがないじゃない。てゆーか離しなさいよ!」

 梨加はそれが当然というようにシラッとしている。葵によって乱された髪を整えた。

「葵ちゃん、もしかして男嫌いってやつなの?」

「そうだ! 葵は男って生き物が大っ嫌いだ!」

 横で二人のやりとりを見ていた茉子は、人差し指をアゴに当てて可愛らしく聞いた。

「……あんた即答ね。そんなじゃ高校生活楽しめないわよ」

「ふんっ。葵は一人でも楽しんでみせる! お前等葵の楽しんでる姿を見てろよ!」

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