可愛いなんて大嫌い
 うるさい葵だが、ゴリラもほっておくわけにはいかず、悲鳴を聞くたびになだめていた。

「ぎゃっ!! 絶対あそこ何かいる!」

 ゴリラの服の裾を掴んで、人影を指差す。

 暗くてよくわからなかったから懐中電灯を当ててみた。

「あれは俺達の次のペアだ。もう追い付かれたんだな。ちょっと急ぐぞ」

 葵達は進むのがとてつもなく遅く、後から来るペアに抜かれて行った。

「こんな所もう嫌だぁ!! 肝だめしやるって言い出した奴誰だ! みーちゃーん!!」

 みーちゃんの名前を呼ぶが、葵の10組後のため聞こえるはずがない。

「神田、大丈夫だから」

「大丈夫だったらこんなに叫ぶわけないだろっ!! お前バカか!」

「じゃあこうすれば大丈夫だ」

 するとゴリラは葵の手を握った。

「何するのだアホ!! みーちゃん以外の奴とこんなことやっていいのか! 殺されるのは葵だぞ」

 葵はその手を振りほどく。

「相手が神田ならみーちゃんは何も言わない」

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