可愛いなんて大嫌い
「全然大丈夫じゃない!! もう帰りたい! 帰らせてくれ」

 現在、葵は2階にいる。目的地である3階の音楽室まではまだまだ遠い。

 しかも音楽室から帰る時間も必要だ。悠長にはしていられない。

「大丈夫だって。ほら行くよ」

「やだぁっ!! もう動けん!」

 矢神は手を差しのべるが、駄々っ子の葵はそこから動こうとしない。

 床に座っていて小さな子供みたいだ。

「じゃあ俺先に行くよ?」

 その瞬間、地べたに座っていた葵は、矢神の足に飛び付いた。

「お前、葵を見捨てる気か!? それでも男か!」

「だからさっきから一緒に行こうって言ってるじゃん」

 葵は観念し、立ち上がろうとするが、

「……何故だ、立てん。動けない」

 あまりの怖さに腰が抜け、立てなくなってしまった。

「ええっ!? そんなことあるの? たかが肝だめしで」

「お前、お化け以上に怖い物がこの世に存在すると思ってるのか!!」

「絶対もっと怖いものあるよ」

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