可愛いなんて大嫌い
「先に帰るとは薄情な奴らだな」

 葵はプンプン怒るが、それを言い出したのは親友のみーちゃんなのだ。

「家まで送ってくよ」

「結構だ。葵は1人で帰れる」

「危ないって。夜道っていうか、もう深夜だからね。変な人いるかもしれないよ。……お化けとか」

 その瞬間、葵の体に悪寒が走った。

「やめろっ! 怖いこと言うなあっ」

「冗談だって。早く帰ろ。葵ちゃんちどっち?」

 お化けには適わないので、家まで送ってもらうことにした。

 深夜の通学路は静まり返っていて、時折鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 その鳴き声が葵はダメなのだ。

 昼間は可愛い鳥達も夜になれば葵の敵となる。

 やっと家が見えてきた。急いで鍵を開けようとするが、

「あ、あれっ? 鍵どこやったっけ!?」

 肝心な家の鍵が見当たらない。

 ポケットの中は空っぽである。

 落としたという可能性も十分考えられるが、葵は裏庭に回った。

 そこからリビングを覗くと

「あっ!! 鍵があんなところに」

 鍵はテーブルの上に置いてあった。

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