可愛いなんて大嫌い
 さっきまで自分の世界に入っていたのに、いきなり火山が噴火したように怒りだした。

 こんな葵でも一応女に分類されるだろう。

 だが矢神という奴は男らしい。男というだけでも嫌いなのに、それプラス女より可愛いらしい。


 ――神様ってのは残酷だ。


「そんな奴は葵の天敵だ! 叩きのめしてやる!!」

「あっちはそんな事一ミリも思ってないから」

 みーちゃんは葵をなだめるが葵のおバカな怒りはおさまらず、陸上部が部活をしているグランドに向かって『ベーっ』と舌を出した。

 それだけでは物足りないのか、今度は口の両端を人差し指で引っ張って『いーっ』とふざけた顔をグランドに向ける。

 そして終いには

「バ―――カッ!!」

 と、なんの罪もないいたいけな少年に、一言罵声を浴びせた。

 そんなおバカな行動を間近で見ていたみーちゃんは、『なんであたしこんな奴と友達なんだろう』と、今更ながら仲良くしている事を後悔する。

 完全に調子にのっている葵は、バカにするような笑い声と共に学校を後にした。

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