可愛いなんて大嫌い
(……ここ、こいつ本当に男なのかっ!? こんな顔して男の制服なんか着て、性別偽ってんじゃないのかっ!?)

 頭の中では様々な想いが駆け巡っている。

 自分から声をかけるべきか、それとも関わらないべきか……。

(いやいや!! 女は度胸、男は死ねだ! そうだ度胸だぞっ!!)

 しばらく自分の席で考えていたが、単純な葵は椅子から立ち上がって隣の席の前まで移動した。

「おいっ、そこのお前!」

 葵の第一声はなんとも偉そうなものだった。

 立っている葵は、席に着いている矢神を見下して、女王様のようである。

「何、神田さん? 俺に何か用事?」

 矢神はそんな偉そうな葵の態度にも動じず、女の子のような可愛らしい笑顔で愛想よく答えた。

(おおお、俺―――っ!? こんな顔して一人称俺っ!?)

 葵は三十五のダメージを受けた。HPが減った。

 ゲームだったら一発で倒されている。

 何を話そうか決めていなかったので、次に発する言葉が見つからない。悩みに悩む。

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