可愛いなんて大嫌い
 廊下の窓を全開にし、日差しが眩しい外に向かって朝っぱらから大きな声で叫んだ。

 朝のホームルームがまだ始まっていないため、廊下にはちらほらと生徒が見られる。

 葵の叫び声を耳にした生徒達は、何事っ!? という驚いた顔をして振り返った。

 一方注目されていた葵は叫んでスッキリしたのか、『うーんっ』と大きく背伸びをして窓を閉めた。

 さっきまでの怒りが嘘のように、一人すがすがしい顔をしている。

「さっ! 帰るぞー」

 叫ぶ事でストレスを発散した葵は、上機嫌に鼻歌を奏でだした。

 そして、ルンルンとスキップをしながら教室まで帰って行く。

(……関わらなければ良いのだ。そうだ、奴の存在を脳から末梢してやる!)

 グッドアイデアを思いつき、自然に口の両端がキュッと上がっていく。

 ふふふ、と不気味で気持ち悪い笑みをこぼしながら教室の中に入った。

 葵が教室に戻るとホームルームが始まり、すぐに一時間目がやってきた。

 一時間目は数学なので机の上に教科書を準備する。

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