可愛いなんて大嫌い
 授業中にもかかわらず、ガタンッと席を立ち、大声を張り上げた。

 なんでこいつに馴れ馴れしく名前を呼ばれないといけないのか、さっき関わらないと決めたばかりなのに、など一人で頭を回転させる。

 だが、葵の声があまりにも大きかったため、授業が途中で中断してしまった。

「神田っ、質問以外喋るな!! 席を立つな!!」

 案の定、数学の先生には怒鳴られた。

「……す、すみませんっ」

 とりあえず謝って席に着く。

(こいつ……絶対絶対許さんっ!!)

 この事で完全に集中力を切らした葵は再開している授業に耳も傾けず、隣の席にいる矢神を睨みつけた。

 葵の後ろでは炎がゴォオオオ!! と燃えている。

「……ごめんなさいっ」

 矢神はしゅんとなって子犬のように可愛らしく謝るが、その異常な可愛いさが葵の癪に障るのだ。

「金輪際、葵に話しかけるなっ!! 絶対だぞ! わかったか!!」

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