可愛いなんて大嫌い
「……俺?」

 はっきりと存在を否定された。

 矢神は人差し指を自分の方に向けて、可愛らしく首をかしげる。

「そうだ!!」

「どうして?」

「くわぁああっ!! ここまで言ってもわからんのか! お前バカだろ」

 何も説明していないんだからわからないに決まっている。

 今日まで喋った事のなかったクラスメイトに対して失礼極まりない態度だ。

「葵は男が嫌いだ! 普通の男ならまだしも、お前は異常に可愛すぎるから更に嫌いだ! わかったらもう話しかけるなよ!」

 葵は自分の言いたい事だけ言うと顔をノートに戻した。

「……俺だって好きでこの顔に生まれたワケじゃないもんっ」

 この一言を聞いた途端、授業に戻っていた葵はもう一度矢神の方へ顔を向ける。

「お前……、それだけ可愛いのに自分の顔が嫌なのか!?」

 矢神はコクンと首を縦に振った。

 葵の後ろからはまた炎が高々と燃えだす。何かが気にくわないようだ。

「贅沢な事を言うな―――っ!!」

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