可愛いなんて大嫌い
 またまた葵の声は大きくなってしまい、周りの席からの冷たい視線がグサグサ突き刺さる。

 幸い先生には気付かれていないみたいで、注意されずにすんだ。

 注意されないのを良い事に、

「やっぱりお前は嫌いだ!! よしっ、決めたぞ! お前は今日から葵の敵だ!」

 葵はとんでもない事を言いだした。

「……敵ー?」

 どういう経緯で敵になったのか、矢神は一瞬頭を悩ませる。

 自分はそんな事思ってないんだけどなー、と言葉を濁した。

「そうだ! わかったらもう葵に話しかけるなよ。お前に関わるなんか御免だ!」

 その時、無情にも授業の終わりのチャイムが学校中に鳴り響いた。

 それと同時に、葵の頭にも小さな鐘の音がチーンと響く。

「お前のせいで授業が全然聞けなかったではないかっ! バカ―――ッ!!」

 大切な大切な授業が葵の知らない間に終わっていた。

 一応真面目な葵にとって授業を聞き逃すなどあり得ない事。

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