可愛いなんて大嫌い
 授業を一時間無駄にしてしまった。

(おのれ―――!! あの男、葵の邪魔をして葵の成績を下げさせる魂胆なのか!?)

 なんとも勝手な被害妄想だが、実際そんな事はないのだ。

 今は休み時間だが、葵はトイレに行く様子もなく、友達とお喋りをしようとする様子もない。

 自分の席で頬づえをついている。

(……誰か席を替えてくれ!! あんな奴が隣にいたらイライラする!)

 葵は机の上にぐったりと伏せてしまった。

 本当に年頃の女子高生なのかと疑ってしまうような態勢だ。

「はあー……」

 口からは曇ったため息が漏れる。

 まだまだ一日は長いというのに、テンションは最悪。

(おかしいっ! 今日の占いでは三位だったのに)

 家を出る前に見て来た占いでは、結構運が良かったらしい。

 ――占いとはあてにならないものだ。

「神田さんっ」

 半分寝ている状態の葵の背中を誰かが叩いた。

『うーん』と唸り、アホっこちゃんみたいな顔で後ろを振り返る。

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