可愛いなんて大嫌い
 人のノロケ話で鳥肌が立つとは、最強の照れ屋さんである。

「あ! それより聞いた? あの男、学年首位らしいぞ。葵負けたな」

 みーちゃんはニヒヒと白い歯を出して、楽しそうな笑みを浮かべる。

 葵をいじめるのが楽しくて仕方ないのだ。

 単純な葵は何に対しても過剰に反応するから。

「学年首位は九条悠里ではないのか?」

 葵は昨日ちょこっと話した美人な優等生さんを思い出す。

 見かけだけでこいつが首位だと決めつけたのだ。

「九条? ……ああ!! あの美人学級委員な。あいつも頭良さそうだけど、首位は矢神って言ってたぞ。それに美人は性格悪いっていうしな」

 それはただの偏見である。しかし葵の耳にそんなものは入って来ない。

『首位は矢神、首位は矢神……』と何度もその言葉が頭の中でリフレインする。

 受け入れ難い現実が目の前につきつけられた。

 というか受け入れたくない。

「……おのれ、あの男―――っ!! 葵が首位の座から引きずりおろしてやるからな!」

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