可愛いなんて大嫌い
 葵は朝から子供のように元気満々である。真実を知り、再び闘志に火がついた。

(絶対勝―――つ!! 死んでも勝つ!!)

 葵の座右の銘は“勝負は勝つまでやる!”という、とっても面倒くさいものであり、頭の中に“負け”という文字は存在しないのだ。

 それは相手が誰であろうと同じだが、憎き天敵が相手なら尚更である。

 葵に目をつけられたら最後、自分が勝つまで追いかけられる。

 また、葵が勝ったらこてんぱんに貶される。

 葵という奴は噛みついたら取れないスッポンのように、とんでもなく面倒くさい女なのだ。

「くそっ!! 脳から末梢すると言ったが前言撤回だ! あいつに勝ってから末梢してやる!」

 そう言うとダッシュで学校へ向かった。

 ……しかし、運動能力が皆無の葵は五十メートルほど走ったくらいで息をきらしている。

 肩で呼吸をし、顔を赤く染めていた。

「……あああ、朝からっ、運動なんか……するものではないっ」

 今から学校が始まるというのに、すでに体力は限界だった。

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