可愛いなんて大嫌い
 クラスメイト達の中には悩んでいる者や、すでに書き終えている者もいる。

 その時、ふと疑問に思った。憎き天敵はどこの大学を志望しているのだろうかと。

(こいつ、東大とか書いてたらぶん殴るぞ!!)

 そう思い、隣の席に目を向けた。そーっと視線を用紙に集中させる。

 そこには“S大学社会福祉学部介護福祉学科”と書いてあった。

 ――葵の頭がブチっと音を立てた。

「だぁあああ――っ!! 真似するな!!」

 勢い良く席から立ち上がり、またまた周囲を驚かせる。

 一瞬で注目の的となった。

 担任はというと、ゴホンと軽い咳払いをした。

 それに気付いた葵は、恥ずかしさから顔を赤らめて静かに席に着く。

(またしてもこいつのせいで恥をかいてしまったではないか!)

 葵の怒りの矛先は、何もしていない事実無根の矢神へと向けられた。

「……おお、お前いい加減にしろよ。そんなに葵に恥をかかせたいのか!!」

 今度は皆に気付かれないように、小さな声で怒る。

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