可愛いなんて大嫌い
 葵の精神年齢はかなり低いと思われる。推定五歳くらいだろうか。

 そんなお子様な葵を前に矢神は困り果てていた。

(……この場合どうしたらいいんだろう。葵ちゃんは頑固だ。頑固すぎる……)

 矢神が重い頭を抱えて悩んでいたら、

「よしっ、わかった。こうなったら三日後の実力テストで勝負するぞ!」

 葵は手をポンっと叩いて、なにやら名案を思いついたらしい。

「葵が勝ったら、お前諦めろよ」

「俺が勝ったら?」

 葵は不気味に笑って

「ふふふ、それはないだろう。勝つのは葵だ。まあ、葵が万が一負けた時は、潔くお前の言う事を一つだけ聞いてやってもいいぞ」

 と、自信満々に言いきった。一体この自信はどこから来るのだろうか……。

 矢神は入試で一位だったらしいと、今朝聞いたばかりだというのに。

「わかった。いいよ」

 矢神はあっさり承諾してしまった。一位の威厳というところか。

 こうして葵の我が侭と思いつきによる勝負が幕を上げた。

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