可愛いなんて大嫌い
 砂糖の甘い匂いが家庭科室の中に漂っている。

 甘いものが大好きな葵は鼻をくんくんさせ、犬のようにしっぽを振っていた。

「もうっ! ここに辿り着くまで時間がかかりすぎたわ」

 一方の梨加はぷりぷりとご機嫌ななめみたいだ。

「そこの三人も手伝ってちょうだい」

 葵達に気付いた先輩は花柄の可愛らしいエプロンをして、型抜きをしながら指示を出す。

 この家庭科室を見渡せば見事に女女女!! とまるで乙女の園である。

 料理部に男子生徒は一人もおらず、三年生から新入生まで女子で成り立っているのだ。

 しかし入部理由は人それぞれで、純粋に料理がしたい人もいれば、家庭科室の窓からグランドで部活をしている男子を見たいという人も中にはいる。

 家庭科室の窓からはちょうどグランドを見渡せる事が出来、運動部員に恋する乙女にとっては絶好の場所なのだ。

「きゃあっ! あの人かっこいいわ」

 ハートの型抜きを片手に、梨加の目もハートになっている。

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