可愛いなんて大嫌い
「どれどれー? どこどこー?」

 隣で型抜きした生地を鉄板に並べている茉子は、梨加の言葉を聞いてグランドに目を向けた。

 葵の方は、

「かっ!! くだらんな。まったくもってくだらない」

 二人がキャピキャピ盛り上がっている中、興味なさそうに一人黙々と作業を続けている。

 それもそのはずで、男嫌いの葵にとって誰がかっこよくてモテるだとか、誰が一番人気があるだとか、といった話題は激しくどうでもいいのだ。

「あの人凄いわ! シュートなんか決めちゃってやっぱりかっこいいわ!」

 梨加はクッキー作りより、サッカー部に釘付けである。

 いつの時代も運動神経の良い男は人気があり、グランド周辺は女子の大群で囲まれていた。

 マネージャーがちゃんと存在しているのに、それを押し退けてタオルなどを渡している。

 恋する乙女は本当に強い。……というか恐ろしい。

 その光景を見てた葵は、改めて女の執念と恐ろしさを思い知った。

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