可愛いなんて大嫌い
 葵を除いた二人は口をあんぐりと大きく開けて、小バカにしたような顔になっている。

「き、近所におすそ分けですって!? あんた何主婦みたいな事やってんのよ。てゆーかババくさいわ」

 お嬢様の梨加にとって“おすそ分け”という単語自体聞き慣れない。

「なんだとっ!? バカにすんな!! 近所のばあちゃん達は優しいんだぞ! この前なんか葵が作ったキュウリの糠漬けをあげたら、箱いっぱいの桃をくれたのだ」

 一方、一般庶民の葵は母親がすでに他界しているため、主婦業などは当たり前で近所付き合いも良好なのだ。

 お嬢様の生活とは真逆である。

「葵ちゃんて自分の糠床持ってるの?」

「おう! マミーから譲り受けたものなのだ」

 十五歳にして自分の糠床を持っているとは、やっぱり葵はババくさいなーと二人はしみじみ思った。



 その頃グランドで部活をしていた運動部員達は、どの部もきり上げて校舎の中に入るため移動していた。

 後ろにはさっきの女子達がチョロチョロとついて来ていたりもする。

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