可愛いなんて大嫌い
 その様子は家庭科室からも見る事が出来、家庭科室の窓際は恋する乙女達でいっぱいになった。

 乙女達の中にはちゃっかりと梨加も混ざっている。

 興奮気味で、目を輝かせてキャーキャー叫ぶ声が四方八方から飛んでくる。

 皆が窓に張り付いている中、乙女の気持ちが理解出来ない葵は、一人白い目で洗いものをしていた。

(……わからん。先輩達には失礼だが、興奮する理由がまったくわからん)

 腕捲りをしてスポンジを片手に、泡立て器やボウルなどをてきぱきと洗っていく。

「おい! そこの金髪ツインテール娘!! お前、俺の光をいじめんな!」

 葵が黙々と洗いものをしていたら、窓の外から大きな声が聞こえてきた。

 しかし、『金髪ツインテール娘』と呼ばれても、葵自身は自分の事だと気付いてないみたいで完全無視である。

「翔、そんな呼び方じゃわかんないよ」

 窓の外の運動部員連中の中には、部活上がりの矢神と藤本の姿があった。

 変態の藤本だが、こう見えてサッカー部員なのだ。

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