可愛いなんて大嫌い
 天敵の姿が目に入り、葵は実力テストの事を思い出した。

 実は今の今までテストの事など忘れていたのだ。

「たまたま通りかかっただけだよ」

「ふんっ、どうだかな」

 葵の負けず嫌いも筋金入りである。

 絶対に自分の非を認めようとしない超頑固者なのだ。

「こらっツインテール娘!! 俺の光をいじめんなっつってんだろ!」

 葵はうっとうしそうな顔をして、半分しか開いていなかった窓を全開にした。

「おい矢神、お前男のくせにこんなバカ男に守ってもらって恥ずかしくないのか!! ……顔が可愛いだけでなく心も乙女とはっ」

 そう言うと全開にした窓を勢い良く閉め、葵は舌をベーっと出して洗いものに戻った。

 一騒動終わったが、未だに窓際では運動部員争奪戦が続いている。

 自分の好きな人に手作りお菓子を渡したり、ただ手を振ってキャーキャー言っているだけの追っかけも料理部の中に存在していた。

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