可愛いなんて大嫌い
「……俺もう翔と友達やめる」

「ええっ!! なんで!? そんな事言うなー」

「翔に付きまとわれてるせいで、葵ちゃんに誤解されたじゃん! そんな奴と友達でいる意味がわかんない」

 こちらの二人は連中達から抜け出して、まっすぐ下駄箱へ向かっていた。

 藤本は溺愛している矢神に脱友達宣言をされたため、必死に後を追いかける。

「なんだよ、お前まさかあのツインテール娘に惚れたって言うんじゃねえだろうな! 俺はあの女認めねえぞ」

「別にそんなんじゃないけど。てゆーか俺が誰を好きになろうと翔には関係ないじゃん」

 まったくその通りであり、いつも金魚のフンのようについて来ては変態オヤジみたいな事を言う藤本を、矢神は相当うざがっていた。

 自分の彼女が言うなら可愛いし、まだわかる。

 だが相手は健全な男なのだ。迷惑極まりない。

「冷たい事言うなよー」

 藤本はご機嫌取りのため、お嬢様についている付き人のように、下駄箱の中に入っている矢神のスリッパを出した。

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