可愛いなんて大嫌い
「……あんた本当に女なの?」

 梨加は信じられない! といった表情で持っていたボウルを落としてしまった。

「なんだと!! 胸ならみーちゃんだってでかいぞ!」

 これ以上こいつには付き合いきれないのか、梨加は片付けが終わったので、茉子と一緒に家庭科室を出て帰りだす。

 あの子に何を言っても無駄だわ、など独り言をもらしていた。

「ふんだっ。そんなもんなくたって生きていけるのだ!」

 半分開き直った態度で葵も家庭科室を後にした。



 そして家に帰ると猛勉強が始まる。

 自分の部屋にこもり、まるで受験生のようにハチマキを巻いて、完全に勉強モードに入った。

 葵の頭には“打倒矢神!!”という言葉しかないのだ。

 あんなに大見得を切ったので、何が何でも負けるワケにはいかない。

 というか最初から葵の頭の中に“負け”なんか存在しない。

 勝負は勝たなきゃ意味がない、と思っている。

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