可愛いなんて大嫌い
「始めっ」

 先生の一言で一斉にテストが始まった。

 今日一日ずっとテストなので、他の授業はないのだ。

 一年生は終わり次第、随時下校出来る。

 葵は『あれだけ勉強したんだから余裕ー』とでも言いたげな表情で、問題を解いていた。

 そんな余裕をかましていても、相手の成績は学年トップなのだ。

 余裕の葵は置いといて、教室の中からはカリカリと鉛筆の音が聞こえてくる。

 今日一日は、聞き飽きるくらいこの音が耳に入って来るだろう。

 休み時間になってもクラスメイト達は皆必死に勉強している。

 参考書を開いている者もいれば、問題集を解いている者もいて、いかにも進学校という雰囲気だ。



 長い長い葵の戦いもそろそろ終わりを迎える。

(完璧だ! やっぱり葵の勝ちだな)

 自信満々のこの表情。勝利を確信するこの余裕。

 負けた時の事など考えられるはずもないのだ。

「お前の出来はどうだか知らんが、勝利は葵が貰ったぞ!」

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