可愛いなんて大嫌い
「知らねえよ。てか、葵のその自信はどっからくるワケ?」

 もっともなご意見である。

 何を根拠に自分が勝利していると思っていたのだろう。

「こうしちゃいられん! 今すぐ事実確認だっ!!」

 葵は全速力でその場を去り、教室へ向かった。

 腹立たしいというより、悔しすぎる。自分の実力を責めた。

 いつも以上に勉強したのに、と後悔だけしかない。



「……おーまーえーっ!! カンニングでもしたのかっ!? さらりと一位なんか取りおって!」

 教室に着いた葵は、朝っぱらから鬼のような顔で矢神に言いよった。

「葵ちゃんおはよー。カンニングなんかしてないよ」

 結果が出る前の葵の余裕がうつったのか、矢神は花のようなとっても可愛い笑顔を振りまく。

 その純粋で可憐な笑顔が、葵の怒りを更に増幅させるのだ。

「じゃあ何だ三点差って!! しかもお前は満点だとっ!? 信じられるかー!!」

 まさに現実逃避である。結果はちゃんと出たのだ。

 ここまできても尚、いちゃもんをつける葵は、やっぱりひねくれ者。

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