可愛いなんて大嫌い
「ここはこうなるからー、答えは“y=5”だよ」

「そっかぁ。わざわざありがとね。どうしてそんなに勉強出来るの?」

 悠里は頭の上に可愛らしい“はてなマーク”を出して、ちょこんと首をかしげた。

 男なら一発で惚れてしまいそうである。

「そんな事ないけど」

「勉強出来るって言わないのね。私、そういう人好きよ」

 この子はなんとも罪作りな子だ。

 葵が一生かけても言えないような言葉を、平気でサラッと言ってしまった。

 そして今にもはち切れそうな胸を、無意識に揺らしている。

(確かに美人だなぁ。なんか可愛いけど……)

 悠里の一つ一つの仕草や言葉が、徐々に男の心を奪っていく。

 今までもたくさんのハートを、無意識のうちに奪ってきたのだ。

「ねえ、矢神君て彼女いるの?」

「いないけど……」

「じゃあ、好きな子は?」

「いないけど……」

 悠里にじわじわと攻められていく。男として悪い気分がしないのは確かだ。

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