可愛いなんて大嫌い
「ふーん。だったら私立候補しようかしら」

「……え?」

「うふふ、冗談よ。またね」

 悠里は可愛らしい笑顔を見せて、教室に戻って行った。

「九条さん凄いな……」

 それはいろんな意味で矢神が感じた事である。

 積極的というか、なんというか、嫌味のない積極さなのだ。

 男なら絶対見入ってしまうと言っても過言ではないだろう。

 しばらく呆気にとられて、その場に立ち尽くしていたが、次の瞬間とっても怖い現実に戻される。

「だーっははは!! 今日はお前の命日となる日なのだ! それまで残り少ない時間を存分に楽しむがいいぞ」

 なんだか聞き覚えのある声が、背後から聞こえてくる。

 それはもしかして、もしかしなくても葵だった。

「……何の事ー?」

 なんとなく想像がついてしまうが、一応聞いてみる。

「誰が教えるかっ! でもまあ、葵が親切に予告してやったんだから有り難く思えよ」

 それだけ言うと、上機嫌な葵はスキップをしながら、教室の中に入って行った。

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