可愛いなんて大嫌い
「俺、今日死ぬんだ……」

 悠里と葵の個性的コンビのせいで、疲れが一気に襲ってくる。

 大きなため息をついて教室まで歩きだした。

 もういっそのこと、葵に本当の事を言ってしまうべきか。

 言ったら言ったで、絶対怒って復讐に燃えるだろうな。

 実に苦しい心境だ。

 葵というスッポンを相手にしているんだから仕方ない。

 いくら嫌いな奴が相手でも、捕らえるまで追いかけて来る。

(……なんて負けず嫌いなんだっ)

 矢神は葵のしつこさを目の当たりにした。



 なんだかんだといろいろあったが、すぐに放課後はやってくる。

 葵の奴は、やっと天敵の泣き顔が見れると気合い十分である。

「さあ、二人とも部活へ行くぞ!」

 同じクラスで、同じ料理部員の梨加と茉子を引き連れ、家庭科へ向かった。

「今日はなんか気合い入ってるわねー」

 梨加はいつもとテンションの違う葵の様子をすぐに見抜き、疑いの目を向ける。

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