可愛いなんて大嫌い
「まあな。だって今日は……ぷふふっ」

「はあ?」

 妄想中の葵は耐えきれず、気持ち悪い笑い声をもらした。

 頭の中ではすでに勝利しており、自分が上の立場にいると思っているのだ。

「……怪しいわ」

「きっと何か企んでるねー」

 具体的にはわからないが、葵の表情から何か企んでいると二人は悟った。

 考えている事が全て顔に出るので、ポーカーフェイスも語れない。

「葵って嘘つけないでしょう?」

「嘘くらいつけるぞ! みーちゃんにはすぐ見破られるけど」

「それが嘘つけないって言うんだよー」

 茉子が最後にとどめを差した。

 その通りです。バカ正直な葵は嘘がつけません。

「う、嘘なんかついちゃいけないんだぞっ!!」

 おバカな葵について行けない二人は、スタスタと先に歩きだした。



 いよいよ葵のくだらない作戦開始である。

 まずマドレーヌのタネを作る。

 小麦粉や卵やらを分量通りに計って、材料を揃えた。

 それらをボウルの中に全て入れる。

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