可愛いなんて大嫌い
 余熱で温めておいたオーブンは、周りも結構熱い。

 葵は容赦なくスイッチを押した。


 ――待つ事三十分。

 焦げ臭い匂いと一緒に現れたのは、見るも無惨な姿になったマドレーヌ。

 真っ黒で炭のようだ。食べられたものじゃない。

(最高の失敗作だ! 砂糖大量に入れたし、真っ黒焦げだし……あいつの顔が目に浮かぶぞ!!)

「葵ちゃん、こっちの成功したマドレーヌをあげるわ」

 葵の作ったマドレーヌを見た先輩は、可哀想に思い、成功したマドレーヌ二つほどを分けてくれた。

「ありがとうございますっ」

 葵は矢神に失敗作と悟られないように、ピンクの紙で可愛らしくラッピングまでしてやった。

 準備は万全である。

(そうだっ!! みーちゃんも協力してくれるらしいから、このマドレーヌをあげるぞー)

 先輩から貰ったマドレーヌもピンクの紙でラッピングする。

 そうこうしているうちに片付けも終わり、部活の終了時間が近づいてきた。

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