可愛いなんて大嫌い
 先輩に貰ったものならその時点で、葵が作ったものではない。

 いかにも自分が作ったかのようにマドレーヌを渡した。

「葵が作ってないなら安心して食えそうだ」

「何だと!? 葵だってちゃんとすれば美味しいお菓子が作れるのだ!」

 葵は渡すものだけ渡して柔道場をあとにする。



 さて、ここからが本番だ。鞄の中の大事な大事な失敗作を確認した。

(ぷぷっ。葵がこんなもの貰ったら顔に投げつけてやるぞ)

 そんな危険物をあげると言うんだから困ったものだ。

 葵は陸上部が終わるまで玄関で待つ事にする。

 しばらくうろうろしていると、運動部員達が次々と校舎の中に入って来た。

 さあ来るなら来い、という表情で葵は矢神を出迎える。

「……あっ」

 一方、矢神は葵の姿が目に入ると動きが止まった。

 昼休みに死亡宣告されたんだから、何をくれるのかとてつもなく怖い。

「ついにっ、ついにこの時が来たぞ! 長かった葵の戦いも、今日ここで終わりなのだー!!」

< 79 / 131 >

この作品をシェア

pagetop