可愛いなんて大嫌い
「今日はお前に一生の頼みを聞いてもらうために来た。この通りだ!」

「一生の頼みぃ!? なんだか嫌な予感がプンプンするぞ」

「実はだな――」

 兄貴は葵の耳元でコソコソと、その頼みを説明する。

 最初は適当に聞いていたものの、葵の顔はだんだん歪んでいき、終いには病人のような顔つきになった。

「なんだそれっ!? 葵は絶対引き受けんぞ!」

「そんな事言うなって! 俺が会社クビになってもいいのか!!」

「この話を引き受けてきた兄ちゃんが悪い! だから葵は何も知らん」

「俺達兄妹だろ!? なっ、この通りだ」

 そう言うと兄貴は床に頭をつけて土下座をしてきた。

(……兄ちゃんの奴、土下座するほど困っているのか?)

 兄貴に土下座されるなど一生に一度あるかないかのこと。

「ま、まぁそういう事なら引き受けてやらない事もないぞっ……」

「本当か!? じゃあ来週の日曜日の朝十時、翠翔学園の前に来てくれると思うから、よろしくー」

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