可愛いなんて大嫌い
「じゃあ俺とやってみる? デート」

「…………はぁッ!?」

 人生初のデートのお誘いに、葵は口をポカンとあけて今の自分の状況を確認する。

 相手は憎き天敵。そんな奴とデートなどやりたいわけがない。

(いや、ちょっと待てよ。これは葵を挑発しているのではないか? もしかして葵に対する挑戦状か!?)

 ただのお誘いなのに、葵はとんでもない勘違いをしてリベンジに燃えていた。

「その勝負受けてたつぞ! では決戦日はらいっ――」

「それじゃあ俺、今から葵ちゃん家まで送ってくー。部活休むって言っといてねー」

「ぅえっ、何するのだ!? おいちょっと、こらっ!!」

 状況が呑み込めていない葵の手を引いて、矢神は学校をあとにした。

「放せぇーっ!! お前正気か!? 葵をどこに連れて行く気なのだこらっ!!」

 校門付近で暴れる葵。

 矢神は可愛い顔をしていても力は普通の男並で、そんな奴に葵なんかが敵うはずもなく、もがき苦しんでいる。

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