可愛いなんて大嫌い
「バカッ放せ!! ふざけるな!」

「ちょっと葵ちゃんと話したいんだけどダメ?」

「葵はお前に話なんかないぞっ!! お前なんか大っ嫌いだ」

 真面目も真面目、大真面目な葵を前に矢神は余裕の表情でクスッと笑った。

 その余裕っぷりが葵の怒りメーターを刺激すると知っていてのことなのか……。

「お前っ……、何がおかしいのだ!?」

「葵ちゃんが俺のことが嫌いなのはわかったよ。でも別に俺は嫌いじゃないから」

「……はぁっ? 一体何が言いたいのだ!?」

 天敵の意味深発言がやたらと憎たらしい。

 葵はいつも以上に眉をつり上げ、鋭い目付きで睨み付けた。

「うーん、なんて言うのかなぁ。葵ちゃんて見てて飽きないんだよねー。すごく面白い」

(面白い……?)

 頭をフル回転させて考える。

(葵が面白いってなんだ?)

 考えること数秒。一つの結論に辿り着いた。

「面白いだと? お前はどこまでも葵のことバカにしおって!! 絶対許さないからな!」

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