可愛いなんて大嫌い
 いつもいつでも本気な自分を貶されたと思った。

 葵が勝負だなんだと言っていても、結局最初から相手にされてなかったんじゃないかと思った。

 本当ならそんな奴と、これ以上勝負を続けてなんかいられないが、一回も勝たないまま終了するなど葵のプライドが許さない。

「……お前いつか絶っ対葵の前に膝まづかせてやるからな」

「うん、楽しみにしてるね」

 悔しすぎて涙が出てきそうだった。

 しかしここで泣いたら今まで以上になめられると思い、涙は見せない。

(こんな奴に見せられるほど葵の涙は安くないんだからなっ!!)

「覚えてろよ」

 悔しそうに一言残し、葵はさっさと学校を後にした。



 一人とぼとぼと帰っていると、

「おっ、葵。なんだ一人なのか?」

 途中の信号で偶然みーちゃんカップルに遭遇してしまった。

 ゴリラのことが嫌いな葵にとって、その光景は最も見たくないものである。

 それなのに、今日の葵はゴリラの方を見向きもせず、真っ先にみーちゃんに抱きついた。

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