可愛いなんて大嫌い
「なっ、なんだお前はいきなり!! 気持ち悪いこと言うな!」

 背中にゾクゾクッと悪寒が走った。

「みーちゃんの気持ちを代弁してみた」

 焦っている葵とは逆に、ゴリラは表情一つ変えていない。

「みーちゃんはこういう時素直じゃないから、あんな言い方しか出来ないんだと思う」

「お、お前なんかに言われなくたってそんな事知ってるんだからな! みーちゃんのこと1番わかってるのは葵だぞっ」

「うん」

 一気に調子が狂ってしまった。

(何なんだ、こいつ!)

 なんだか煮え切らない気持ちだが、悪い事を言われた訳ではない。

「ふんっ、まぁアレだ。……お前そんな顔してみーちゃんのこと葵の次ぐらいに理解してるんだなっ」

 葵はこんな事でゴリラを認めたくないのだ。

 というか、ゴリラを認めてしまったら自分の負けだと思っている。

「ありがとう」

 お礼を聞いた瞬間、その場の空気に耐えられなくなった葵は

「……帰る。みーちゃんに礼言っといてくれ」

 一人席を立ち、ファミレスを去った。

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