可愛いなんて大嫌い
 しばらくしてみーちゃんがテーブルに戻って来た。

「あれ、葵は!?」

「先に帰った。“ありがとう”だって」

「なんだあの野郎! それはそうと、葵の話を聞く限り、矢神は葵のこと気に入ってる気がするんだけど」

「俺もそう思った」

「だよなー。どうでもよかったら葵みたいなめんどくさい奴相手にしないだろ?」

「……ん」

 ゴリラは返答を渋った。“うん”とは口が裂けても言えそうにない。



 翌日、いつも通り登校して来た葵を待ち構えていたのは、憎き天敵の挨拶であった。

「葵ちゃんおはよー」

 いつにも増して可愛らしい笑顔を撒き散らす。

「なんだお前! 昨日のこと勝ったと思うなよ」

「昨日のことって何? なんか勝負したっけ?」

 勝負などしていない。葵の勝手な被害妄想である。

 鞄を机に置いて席に着いた。

「ふんっ。わからないなら別にいい。……お前、葵のことバカだと思うか?」

 昨日みーちゃんに言われたことが今日になっても気になっていて、葵は机に伏せた。

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