黒水晶
イサはテグレンの方を見て戸惑い、
「そんな失礼なことはできませんよ……」
すると、マイが口を挟んだ。
「私もその方がいいなっ。
イサ、最初私に会った時は、くだけた話し方だったじゃん。
その方がとっつきやすいよ」
と、語尾に音符がついていそうな声で笑んだ。
イサは照れたように片手を頭の後ろにやり、
「テグレン様が許可して下さるのなら……」
テグレンはイサの言葉に思わず吹き出してしまう。
「私は『様』なんて付けてもらうような身分じゃないよ。
私たちの間じゃ、堅苦しいのはナシだ。
それに、あんたの国にとって大事な人材であるはずのマイには、最初気楽な口調で話しかけていたんだろ?」
「いや、あの、それは……。
たしかにマイ様は、我が国に必要な存在ですが……。
マイ様を一目見たとき、自分より年下だと思ったので、つい……」
「なにそれ! そう言うイサはいくつなのっ?」
マイは膨れっ面で尋ねる。
「14」
「私と一緒じゃん!」
「マジか……。正直、そうは見えない」
二人のやり取りを見て、テグレンは柔らかい顔になった。
「イサが普段どおりの口ぶりになってよかったよ。
あんたたち、最高のコンビになりそうだね」
「あのっ! 友達ではなく、俺はマイに付き従う者なのでっ!」
「同い歳の男の子を付き従わせるなんてイヤだよ。
私そういう趣味ないしっ。
いいじゃん、友達で」
マイが非難じみた声音でそう言うと、
「わかったよ」
イサは怒ったように照れつつも、承諾したのであった。