黒水晶
“ガーデット帝国……”
ガーデット帝国を疑いはしても、フェルトはイサのことまで疑いたくはないと思った。
レイルには、その気持ちを言えなかったけれど。
“イサ……。君はなぜ、マイさんのそばにいるんですか?
国王の命令だというのは、わかりますが……。
どうして君がその任務についているのか、
国を離れなければならなかったのか、
君は疑問に感じたことがないのですか?”
キリキリ痛む心で、イサの身を案じるフェルト。
レイルはイサを悪者だと疑っており、
「イサってヤツは、マイを自国の利益を上げるために利用するつもりです!!
証拠はないけど、絶対、間違いない!!
ヴォルグレイトの命令を受けた時点で、イサはガーデット帝国の回し者なんだ!!
マイと歳が同じだから、
マイが一人だったから、
それに付け込んで、イサはマイに近づいたんだ!!」
「レイル……」
レイルは目に涙を浮かべ、鋭い目つきで言った。
「ガーデット帝国は、そのくらい平気でやる連中だ!!
表ではいい顔をして……。
裏では汚いことしてきたくせに、歴史書に国の汚点を残さないよう手回しまでして、成り上がってきた。
そういう、悪魔のような国なんだ!!」
フェルトは、興奮して泣きじゃくるレイルの背中をさすった。
母国を失ったつらさと憎しみ。
レイルの話していることが真実なのかどうかはまだ分からないが、レイルの抱えるトラウマは、フェルトにも十分理解できた。