黒水晶
一方、ガーデット帝国では、ヴォルグレイトの指示のもと、厳重なる警備体制に入っていた。
外国からの観光客の出入りには、警備兵が今まで以上に厳しい目を光らせている。
ルーンティアでめぼしい情報が得られなかったフェルトとレイルは、ガーデット帝国に向かっていた。
だが、警備を厳しくされたため、住所不定の旅人であるフェルトとレイルは、入国を拒否されてしまった。
本当ならば深刻になる場面なのだが、フェルトはいささか楽しそうにこう提案した。
「仕方ありませんね。
魔術を使って、城の内に侵入しましょう。
ルーンティア共和国は、さすが魔術の国というだけあって、魔術による強力な結界が張られていますが、その点、ガーデット帝国はやりやすい。
ガーデットは剣術のみの警備なので、少し気をつければ、魔術で姿を消して侵入し、城の中を調べることも可能です」
レイルはやる気に満ちた瞳で、
「やりましょう!
何もしないで待ってるなんて、イヤですから」
と、息まいた。