黒水晶

カーティスは、一人寂しげな表情で退屈しているマイに気づき、様々な会話を彼女に振った。

マイは嬉しそうにカーティスの話に耳をやる。

この城での修業話。

イサが生まれた頃の話。

カーティスは様々なことを話した。

カーティスの話に興味が湧き、マイは城のことやイサのことをあれこれ質問する。

カーティスは楽しそうに受け答えした。

“カーティスさんって、イサの言ってた通り、優しい人だな。

あったかい笑顔で……。

たくましい男性の剣術師なのに、どこか母親のような雰囲気があって。

イサの母親代わりっていうのに、納得だよ”

マイは思った。

イサのことを話すカーティスの姿は、本当の親のように見える、と。

「イサも、カーティスさんを慕っていました。

いつか、カーティスさんを超える強い剣術師になるのが目標だって、イサは言ってたんです」

「そうでしたか。

イサ様がそんなことを……。

イサ様ならきっと、私の実力など軽々と超えてくれるでしょう」

「それを聞いたら、イサも喜ぶと思います」

マイは言い、視線を遠くのイサに戻した。

イサは立食形式の料理を口にし、偉そうな外国人と話している。

カーティスは優しい瞳に、暗い影を落とした。

「イサ様なら、きっと、この国をも変えてくれる……」

その声は小さすぎて、マイの耳には届かなかった。

パーティーの様子を無邪気に見ているマイの横顔を、カーティスは心もとない表情で見ていた……。

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